19350430致增田涉

350430致增田涉



    十三、二六日の手紙皆拝見;葉書と絵葉書もつきました。贯休坊様の羅漢は石ずりの方が却てよいと思ふ、肉筆の方は何んだか余にグロテスクで、極楽に行く時にこんな顏をして居る人々ばかりと遇ふと初の内は珍しいかも知らんが暫く立つと困ります。
    石恪君の絵はよいと思ふ。
    『小説史略』出版の運に遇ふた事は兎角満足します。そ—して御尽力に感谢します。「共訳」は面白くない、矢張あなたの名前丈で結構です。序文の事は後でかきましゃう。
    写真は一昨年のものは最新板です。今一所に送ります。
    僕の字は五円の価値ある事は余りに滑稽です。実は僕はその字の持主が裱装費を使った事に対しても気の毒で堪まりません。倂し鉄研先生からはもうもらったから、それで一段落としましゃう。そ—して永久の借用として仕舞ひたい。そうして「『選集』の印税を貰らったら」でも何も送らないで下さい。さうでなければ荷物が多くなって転居するに大に困ります。
    検閱がやかましいから『文学季刊』が翻訳を多く入れる外仕方がない、而してその為めに活潑な有様を失ひました。近頃の上海の出版物は大抵さうである。
    上海の文壇で失敗し所謂作家は頗る日本へ行って居る。てゝではそれを「入浴」或は「鍍金」と云ふ。近頃、上海の新聞に秋田雨雀様と一所に取った三四人の写真が出た、それも復活運動の一です。

洛文上四月卅日

増田兄几下
    上京して居るから私は彼処此処に行って几に凴って居るまいと思って居たが手紙を得て始めて矢張り引込んでると解った。此からは几のそばの疑問号を除く。


    十三、二十六日手书均奉悉。明信片与画片也收到。关于贯休和尚的罗汉像,我认为倒是石拓的好,亲笔画似乎过于怪异,到极乐世界去时,如老遇到这种面孔的人,开始也许希奇,但不久就会感到不舒服了。
    石恪的画我觉得不错。
    《小说史略》有出版的机会,总算令人满意。对你的尽力,极为感谢。“合译”没有意思,还是单用你的名字好。序文日后写罢。  照片是前年的,算是最新版,现一并寄上。
    我的字居然值价五元,真太滑稽。其实我对那字的持有者,花了一笔裱装费,也不胜抱歉。但已经拿到铁研先生的了,就算告一段落,并且叙谈永久借用了事。再:如得到《选集》版税,请勿给我送任何东西,否则,东西一多,搬家大不方便。
    因检查讨厌,《文学季刊》只好多用译作,那也就没有活气。近来上海刊物,大抵如此。
    所谓作家,在上海文坛失败,多往日本跑,这里称为“淴浴”或“镀金”。最近上海报纸登了有三四个人和秋田雨雀先生合照的照片,这也是复活运动之一。

洛文上四月三十日

增田兄几下
    我原以为你上京后,会东奔西跑,难以伏案。便得手书后,才知你还呆在屋里。于是就把“几”字旁的问号删除了。