19340912致增田涉

340912致增田涉



    九月二日の手紙を拝見致しました。
    漢学大会には大にやりなさい。曼殊和尙の事は左傳や公羊などの研究よりも余程面白いに違ひない。併し今度の東方学報を見れば日本の学者が漢文で論文を書いて居る御方がありましたから実におどろきました。一体誰によませるつもりでしゃう。
    てゝに於ける曼殊熱は此頃少々下火となり全集を印刷した後には拾遺などは現はれない。北新も元気無之です。
    上海はすゞしくなりました。私共は無事です。
    皆様にもよろしく

洛文上九月十二日

増田兄卓前
    二伸、內山老板は母様の病気の為め帰国しました。二十日頃、上海ヘ帰るそうです。


译文
    九月二日手书奉悉。
    汉学大会,大可参加。研究曼殊和尚一定比研究《左传》、《公羊传》等更饶兴味。看了这期《东方学报》,居然有用汉文发表论文的日本学者,殊感惊异,这究竟是打算给诠读的呢?
    此地的曼殊热,最近已略为下降,全集出版后,拾遗之类,未见出现。北新已无生气。
    上海已渐凉爽,我们平安。
    祈代问候诸位。

洛文 上 九月十二日

增田兄桌前
    再者:内山老板因母病已归国,据说将于二十日左右回沪。