19340607②致增田涉
340607②致增田涉
    御手紙と御写真とをいたゞきました。写真は特别に怖しい顏をして居る相もないと思ひます。蓋し其の比較は家庭時代の写真と下宿時代の写真とでしなければならないので而して上海にいらしゃった時にはもぅ苦悩時代に這入って居たのだから私の目で見ればそう違はない様になります。
    『小説史略』の訂正を二度送りましたが到着したか知りません。近頃新発見も多く尙訂正すべき処が隨分ありましゃうけれども續いて研究する考へもないからその位にしていて仕舞ひましゃう。
    上海の景気と漫談とは両方とも不景気。大抵ひきこんで居る時が多いです。テロもひどいがテロ規則がないから、意外の災に思はせて反っておしろしくなくなりました。夏頃に子供をつれて長崎あたり行って海水浴でもしようかと思った事がありましたが又やめました。しからば不相変、上海です。
    私達は皆な達者ですが、たゞし其の「海嬰氏」は頗る悪戱で始終私の仕事を邪魔します。先月からもぅ敵として取扱ひました。
    『引玉集』の印刷所は東京の洪洋社です。
洛文上六月七夜
增田兄几下
译文
    惠函与玉照均收到。我并不觉得尊容特别可怕,当然要就家居时期与寄宿时期的照片做比较的,因你抵沪后已进入苦恼时期,故我看来并无显著变化。
    两次寄上《小说史略》的订正,未知收到否?近来有不少新发现,颇有尚须订正之处,但没有心思继续研究,就姑且那样罢。
    上海的景象和漫谈萧条,我大抵闷在家里多。恐怖甚烈,因其没有规律,就被看做一种意外灾害,反而不觉得可怕了。曾经打算夏季带孩子到长崎去洗洗海水浴,又作罢了。于是暂时仍在上海。
    我们都好,只有那位“海婴氏”颇为淘气气,总是揽扰我的工作,上月起就把他当作敌人看待了。
    《引玉集》的印刷所是东京的洪洋社。
洛文 上 六月七夜
增田兄几下
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